和ろうそく

そうそくは、世界各地で独自に発達しました。人類で最も古いろうそくは、古代エジプトの遺跡から燭台が見つかっていることから、古代エジプトで使われていたと考えられています。ガス灯が発明されるまで、ろうそくは暮らしを便利にする「照明」であり、燃えきるまでの時間が一定であったため「時計」の役割を兼ねていたとされます。

日本における、ろうそくは7世紀ごろの唐から伝わったとされています。894年に遣唐使が廃止されると、交易量は減少し、ろうそくの輸入も途絶えたため、国産のろうそく(和蝋燭)が検討され始めたようです。

戦国時代の頃から、漆(櫨)の実を粉砕してから蒸し、原料としたろうそくが作られるようになりました。江戸時代は漆の栽培が盛んになり、日本各地で生産された蝋を元にろうそくが生産されるようになりました。和紙で作った芯と櫨の実を原料とした蝋で作られる和ろうそくは植物性であり、煤が出ても払えば落ちます。年末になると各地のお寺で『煤払い』が行われますが、これは植物性の和ろうそくで付いた煤だから払っただけで落ちるわけです。
一方、西洋ろうそくは「パラフィン」という石油由来(鉱物油)の原料を使用します。効率よく燃えるため、細い芯で点火することができ、和ろうそくに比べて長時間安定的に燃焼します。しかし、洋ろうそくから発生する煤は『黒煙』です。その主成分は炭素ですので、仮に寺院等で洋ろうそくを使用し続けると、『煤払い』の行事で単なる払っただけでは汚れが落とせず、洗剤を使って洗わなければなりません。
和ろうそくの芯は、和紙を棒に巻き付け、い草から取れる燈芯を一本一本丁寧に巻いて作られています。棒に巻き付けることで芯の上まで空洞ができ、火をつけると穴から空気を取り入れて、火を吸引することから、炎がゆらゆらと大きく揺らぎ、消えにくいのが特徴です。和ろうそくは風がなくとも炎が揺れるのは、芯から空気が流れることによって起きる現象です。

和ろうそくの炎は大きく揺れるオレンジ色となります。ろうそくは貴重な夜の照明となります。そのオレンジ色で灯されることによってより美しく艶やかに映えることから、芸子さんが白塗りになったと言われています。日本文化の趣の深さと、美意識の高さに関心するばかりです。

時代は流れ、現代においては電気も普及し、寸分の狂いのない電波時計も個人で所持できるようになりました。文化の発展とともに、需要を減らしてきたろうそく。とりわけ和ろうそくは安価な洋ろうそくに押され生産量を減らし続けてきました。

時代は流れ、現代においては電気も普及し、寸分の狂いのない電波時計も個人で所持できるようになりました。文化の発展とともに、需要を減らしてきたろうそく。とりわけ和ろうそくは安価な洋ろうそくに押され生産量を減らし続けてきました。

かつては日本各地に漆の栽培産地が多数あり、蝋の原料を入手できましたが、現在は数ヵ所に限られています。現在も和ろうそくを製造している蝋燭店は全国に10~20件くらいといわれていますが、多くは原料を取り寄せて製造されています。

電気も時計も普及した今もなお、ろうそくが灯され、その炎に魅了されるのはなぜでしょう?

癒しやリラックスと1/fゆらぎ

自然界に存在するものには、かならず「ゆらぎ」があると言われています。一定に見えても厳密には一定ではありません。つまり、ゆらぎのない自然物はないということです。揺らぎが大きいと意外性・突発性が高く、次に何が起こるかわからないので人は不安になります。逆にゆらぎが小さすぎると、安心ですが単調で変化がないので飽きてしまいます。

1/f(えふぶんのいち)ゆらぎとは、規則性と突発性、予測性と逸脱性が適度に組み合わさったゆらぎで、居心地の良い空間と情報を与え、人の心を落ち着かせるといわれています。

パラフィンを原料とするようろうそくよりも、植物由来を原料とする和ろうそくは無風の環境でもゆらぎます。これこそ『1/fゆらぎ』であり、光の癒し効果です。また、洋ろうそくは石油由来であるため特に消灯時に嫌な匂いがしますが、和ろうそくは灯している最中もかすかな良い匂いがします。これらの理由から灯すだけで人々にリラックス効果を与えてくれます。

また、現在SDGsの概念が広がりを見せており、特に海外では植物由来の原料のみで作られている和ろうそくは『エコキャンドル』と呼ばれ、インバウンドでの人気が高まっています。

ぜひ和ろうそくの魅力を体感ください!

スズキ造花店メモリアルギャラリーでは、和ろうそくの製造元より直接商品を仕入れして販売させていただいております。